一匹狼くん、 拾いました。弐

 心に潜む、悪魔は言う。いつまで夢を見てんだ。現実を見ろって。

 大人は嘘つきだろって。でももう、疲れた。誰かを疑うことから解放されたい。

「可哀想だから、ほっとけない?」

 同情は嫌だ。

 紅成さんは嘘つきじゃない。それでも聞いてしまう。俺は本当に怖がりだ。

「違う。俺は仁が大切。友達として……アハハ! 歳離れすぎか、にしては」

 紅成さんが声を上げて笑う。目頭が熱くなる。

 良い人すぎる。俺にはもったいない。

「俺を詐欺に遭わせようとか思って」

 慌てて口を閉じる。ダメだろ、そんなこと聞いたら。

「結賀、俊くん、ごめん少し仁と話してくる」

 俺の手をそっと握り、紅成さんは歩き出す。

「こ、紅成さん、すみません。怒ってます?」

「ちょっと待って」

 何も教えてくれない。

 五階にある、俺達の部屋の中に入って、鍵を閉めてしまう。

「紅成さん、あの」

「俺、仁を養子にしたい。ごめん。仁の父親がどんな人かわからないうちは、言わないつもりだったんだけど。不安にさせたか」

「は、なっ、何で」

 涙が溢れてしまう。

「これから色々あると思う。進学に就職、するなら一人暮らし、結婚とかも。そういうの、少なくとも康弘さん達には任せたくない」

 何でそんなこと言ってくれるんだ。夢?

「こ、紅成さんあの……俺、結婚できない」

 ゲイはダメだったらどうしよう。

「え、どういう意味」

 紅成さんは眉間に皺を寄せてしまう。

「俺、結賀が好きです」

「そうなのか。まぁとにかく、仁は俺の子供にするから」

 全部ひっくるめて、いいよってこと?

「と、とにかくじゃな……うっ、うあっ、あああぁぁぁ!」

 掠れた、赤ん坊みたいな声が出る。抱きしめられて、涙を拭われる。

「寂しかったよなぁ。旅行終わったら一軒家で一緒に暮らそう。当分は寮から学校行くかもだけど」

 言葉の節々があったかい。心が夕日の熱に溶かされていくみたいだ。

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