俺様パイロットに独り占めされました
と、その時。


「っ……最低っ!!」


CAの捨て台詞と共に、パンッと空気を裂くような破裂音がロビーに響いた。
思わずビクッと肩を縮めて、恐る恐る目を凝らすと、久遠さんが顔を背けている。
彼女に殴られた様子で、その頬が赤くなっているのが確認できた。
怒り心頭のCAは、彼に踵を返して、バタバタと走り出す。


「あ」


なんとも間の悪いことに、私のいる方向に駆けてきた。
彼女は泣き顔を両手で覆っていたから、すれ違ったのがグランドスタッフだなんて気付かなかったと思うけど、その背を目で追った久遠さんとは、正面からバチッと目が合ってしまい……。


「……あ」


お互い、同じ形に口を開けて、宙で目線を交わす。
次の瞬間、彼がものすごく不機嫌に顔を歪めるのを見て、私は慌ててその場から逃げ去ろうとした。
ところが。


「おいこら、待て」


大きな歩幅でツカツカと歩み寄った久遠さんに、首根っこを捕まえられた。


「っ……」


それでも逃げたい一心で、足を前に進めようとする私に、彼がますます眉間の皺を深める。


「立ち聞き、趣味か」


冷気漂う短い一言に震え上がりながらも、私はジタバタするのだけはやめた。


「は、離してください」


掴まれている首の後ろ辺りに手を翳すと、わりと素直に離してくれた。
解放されて、思い切って彼に向き直る。
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