怪盗ジャック〜月の輝く夜に〜
この世は金持ちが支配する仕組みになってしまった。平民から貴族や王族は金を巻き上げ、贅沢を楽しむ。しかし、落ちぶれた平民たちは働いても働いても生活が楽になることはない。

傲慢で平民に平気で唾を吐きかける貴族たちのことを、平民たちは「巨人」と呼んだ。巨人のように突然現れ、幸せや希望を踏み潰していくからだ。

平民の中には全てを諦め、貴族たちに真面目に税金を払う者もいた。しかし、それと同時に貴族たちに様々な方法で立ち向かう者もいた。

これは、十歳ほどの少年の物語ーーー。



とある貴族の屋敷では、大勢の招待客が集められ、盛大なパーティーが開かれていた。平民が見たこともないような豪華な食事やお酒が並び、誰もがお金をかけた趣味や仕事の話をする。

「ああ〜、ヤダヤダ!人を見下すことしかできない貴族や王族なんかには死んでもなりたくないね!」

明るいパーティーホールを窓から見つめ、黒いフードをかぶって変装をした少年がひとり言を呟く。そして貴族たちがいつも自分たちにするようにペッと唾を吐いた。
< 1 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop