黙って俺を好きになれ
5-1
もう筒井君から電話が来ることも、ツイッターのようなラインが来ることもなくなった。

週明けに会社で顔を合わせたとき。束の間、刺すような眼をした彼は、次の瞬間には何もなかったように『おはようございまーす』と温度のない笑顔を向けて通り過ぎていった。心臓が裂かれたかと思うほど痛くて、ただ苦しかった。自分で選んだことなのに涙で視界が歪むほど。・・・辛かった。




あの日、夕方近くにアパートまで送ってくれて以来。幹さんは事あるごとに声を聴かせてくれるようになった。週末はすべて予定を入れるなと厳命されていて、そんなに構いたがるタイプの人じゃないと思っていたから少し意外だった。


来週はバレンタイン。一生心に残るかもしれない。
初めて、誰かに気持ちを贈ろうと思えること。



・・・筒井君への返事を立ち消えにしてしまったこと。

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