黙って俺を好きになれ
それからイタリアンカフェでランチをご馳走になり(昨日の今日で自分で払うって言ったのに、エナに怒られるからって取り合ってもらえなかった)、午後はなぜか、ボーリングもできる大型のゲームセンターのような場所に連れて来られて、ストライクを連発する筒井君に感心しきり。やれば出来る子だったのね。

「センパイはコントロールいーけど、力がないですもんねー」

並んだピンの真ん中へと球が転がっていき両端が残る・・・の繰り返し。スコアは散々たるもので、初めて筒井君に純粋な敗北感を憶えた一日だった。






夕方の6時頃には私のアパートに着き、出かける前は悪魔に見えた彼に心を込めてお礼を伝える。独りじゃない誕生日を過ごせたお礼を。

「今日は色々と気を遣ってくれてありがとう。誰かと出かけるのも久しぶりだったし楽しかった」

「なら良かったー。いつでも付き合いますから、言ってくださいよー」

「私より、彼女作って連れてってあげて?」

エナの話だとしばらく恋人はいないらしい。だからってせっかくの休日を職場の先輩への義理を果たすのに使うなんて、もったいない。
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