黙って俺を好きになれ
わざと挑発に乗ったのは、筒井君を圧倒的にねじ伏せるため?それとも。私の気持ちを試したい・・・?心を揺らされておずおずと顔を上げる。

「お前は黙って見てればいい」

底のない闇色の眸に見つめられた。

「・・・女を譲れねぇのは(おとこ)の本能だ。そんな顔をするな、()り合うわけじゃねぇよ」

薄く口角を上げたあなたの指が顎の下にかかり、顔が寄せられる。

筒井君が本気でぶつかってくるなら。幹さんも手加減しないだろう。それでもキミにこれ以上、傷だらけになって欲しくなかったのに。もう忘れてほしかったのに。

どこか。私を宥めるようなしっとりとした口吻。胸の奥底で立った細波は消えないまま、曖昧に溶かされていく・・・・・・。




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