黙って俺を好きになれ
「・・・思い通りにならねぇガキの頃は、どれも焦れったいだけだったが」

少し目を細めて仄かに笑んだのが手に取るようで。どんな生き方でも幹さんが幹さんの為に選べたならいい。他人の思惑に狂わされた人生じゃないなら。

「お前をがっかりさせなかっただけでも悪くないってことにしておけ」

芯のある柔らかな声音。幹さんの顔がどうしても見たくて上を仰ぐ。途端、唇を食まれた。後ろ頭をホールドされ、啄ばんでは繋がるの繰り返し。強かに征服されるより切なく熔かされる。

目を閉じる寸前、あなたは笑ったように見えた。不敵そうでも人が悪そうでもなくどこか、はにかんで幸せそうな。それが答えなら十分だった。消せない背中が枷じゃないならそれで。

私にしか見せない笑顔を宝物みたいに胸にそっと仕舞いながら。口移しで伝える、言葉より素直に。

地獄に堕ちる時はちゃんと付いていきます、寂しがりな幹さんに。・・・と。




< 235 / 278 >

この作品をシェア

pagetop