こじらせ社長のお気に入り
「笹川さん。身の危険を感じたら、コイツのこと蹴り飛ばしていいですからね」

「ひっでぇなあ。ちゃんと送ってくって」

あれ?いつもの口調に戻った。

「あなたは黙っててください。笹川さん、いいですね?」

「は、はい」

ほとんど条件反射のように返事をしてしまう。

「もう!信用ないなあ。笹川ちゃん、ちゃんと送り届けるから」

「お、お願いします」

流されるまま、社長に送られることが確定していた。まあ、これじゃあ駅まで歩く自信もないから助かるんだけど……
社長っていうのが……

みんなに冷やかされる中、社長と私はお店に呼んでもらったタクシーに乗り込んだ。
もう……そんなふうに冷やかされたら、その気がなくても意識してしまいそうだ。
そんな自分が怖くて、できるだけ社長を視界に入れないようにと、俯いてやり過ごす。

「まだ眠いか?起こしてやるから寝ててもいいよ」

私が答える前にグイッと肩を引かれ、再び社長の膝に頭を乗せる格好になってしまう。

「えっ?あっ、ちょっと……」

「いいから。甘えとけ」

別に眠くはないんだけど……
大きな手で頭を撫でられてしまえば、逆らう気力が次第に削がれていく。
だって、これ、心地良すぎるから……
拒否しないでこんなふうに思ってしまうなんて、私、相当酔ってるみたいだ。


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