こじらせ社長のお気に入り
「な、何を言ってるんですか!?」

思わず大きな声が出てしまう。
本当に、この人はなんてことを言ってくれるんだ。

「笹川ちゃん、焦りすぎ。冗談だって」

くすくす笑う社長を見ていると、無性に腹が立って思いっきり睨みつけてしまう。
私をからかって楽しんでいると思うと、さっきの胸の高鳴りとは違った意味で、心拍数が上がってくる。それを落ち着かせるように、ぎゅっと拳を握った。

「……言っていい冗談と、よくない冗談があります。今の冗談は、私には不向きなのでやめてください。他の女性にならどうぞ。喜ばれると思います」

自分でも思っていた以上に低い声が出た。早口に捲し立てると、何かを言われる前に踵を返す。そのまま、お手洗いに行く旨を告げて、素早く部屋を出た。
すぐに副社長と出会して怪訝な顔をされるも、会釈だけして足早にその場を離れた。

バカみたい。あんな軽い社長なんかの言葉に、ドキドキするなんて。
個室に逃げ込むと、思わず両手で顔を覆っていた。


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