こじらせ社長のお気に入り
そうこうしているうちに連れてこられたのは、予想外にラーメン屋さんだった。沢田さんがあからさまに顔をしかめている。

社長はそんなことお構いなしって感じだ。

ラーメン大好きな私としては、ここが有名店だって知っているだけに、密かにテンションが上がる。常に行列ができているって聞くのに、タイミングがよかったのか、さほど待たなくても入れそうだ。

「ここって、すごく有名なお店ですよね?醤油ラーメンが、シンプルなのに美味しいって」

「おお。笹川ちゃん、知ってるの?」

「はい。一度来てみたいって思ってたんです!!連れてきてくださって、ありがとうございます」

私の反応に、嬉しそうに頷く社長。
それとは対照的に、もはや顔が引きつっている沢田さん。

わかるよ、わかる。仕事の日とはいえ、女の子を連れて来るようなお店じゃないよね。
でも、いいじゃない。デートじゃないんだから。これでイタリアンのコース料理とかに連れて来られたら、その方が引くよ。
それに、連れて来てもらっておいて、文句なんて言えない。

さすがに沢田さんも気を取り直したのか、会話に加わってきた。

「そんなに有名なお店なんですか?楽しみです」

精一杯の愛想を込めているのが見ていてわかってしまうけれど、さっきまでの雰囲気に比べたら、随分とマシだ。

< 32 / 223 >

この作品をシェア

pagetop