こじらせ社長のお気に入り
しばらくして、ノックと共に「笹川ちゃんいる?」なんて、さっきの厳しさなんて微塵も感じさせない軽い口調で、社長が戻ってきた。

「すみません。カップを下げてきます」

「ああ、いい。瑞樹に任せてきたから」

社長は私の席の前まで自分の椅子を引っ張ってくると、どかりとそこに座った。
ぐちゃぐちゃな感情のままでは、社長の顔を見ることなんかできなくて、俯いたまま謝罪した。

「すみませんでした。私のせいで……」

「笹川ちゃんは、何か悪いことをしたのか?」

「……何がいけなかったのか、正直わかりません。けれど、山川さんは、私に対して怒りをぶつけていたので」

「そう。ただぶつけてたってだけ。我がままな言い分をね。何一つ、落ち度のなかった笹川ちゃんに」

「落ち度……」

ふと顔を上げれば、穏やかな表情をした社長がいた。
怒って……ない?





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