ぜんぶ、嫌いだけど
「あの子たちは褒めているフリをして、下げているだけでしょ」
「そうだね。私のことかわいそうって言いたいみたい」
見た目も、性格も、勉強も運動だって、夏那はなんでもできて、なんでも持っている。
だからこそ、かわいそうな部分を見つけて、慰めているフリをして落としてくるのだ。
昔から夏那はそういう標的になりやすい。
世界は彼女のために回っているように見えるのに、本当は彼女が世界に合わせているだけ。
「馬鹿だね」
「あの子たちが?」
「アンタが」
なにを言っても夏那は驚かずにクスクスと笑う。
最初から私の答えを知っているかのようで、いやそうじゃない。
私の性格を熟知した上で、わかっているんだ。
それなのに、アンタは私に言わせる。
「そんな子たちにいい顔して、楽しいの?」
私もわかっていて、口にする。
望んだ言葉を手にした夏那が、満足そうに唇で弧を描く。