新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
「やっと来たようだ。悪いが少しの間、口を結んでいてくれるかい?」

「……? はい」

 意味がわからぬまま返事をすると同時に、廊下と部屋を仕切っている襖が勢いよく開いた。

 その先にいたのは、呼吸を乱したジョージさんだった。私たちを見るや否や、社長に向かって声を荒らげた。

「どういうつもりだ、父さん! 勝手に涼を連れ出したりして……!」

「だからお前もこうして呼んだんだろう。それよりも少し落ち着きなさい。他の客にも迷惑だ」

「……っ」

 社長に言われて悔しそうに唇を噛みしめると、ジョージさんは襖を閉めて私のもとへ駆け寄ってきた。

「すまなかった、涼。大丈夫か?」

 隣に腰を下ろすと、ジョージさんに心配そうに聞かれ、どう答えたらいいのかわからなくなる。

 さっき社長に少しの間、口を結んでいてほしいと頼まれたもの。なにも言わないほうがいいんだよね?

 だけどあまりにジョージさんが心配そうに私を見るから、「大丈夫です」と一言だけ伝えた。

「それならよかった。……でも嫌な思いをさせたよな。本当にごめん」

 私に謝ると、ジョージさんは社長を見つめた。
< 263 / 277 >

この作品をシェア

pagetop