新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 しかし一週間後、そんな悠長に構えてなどいられない噂が、社内中に広まった。
 ジョージさんと金子さんの挙式、披露宴の日程が決まったというもの。

「ついに結婚かぁ。長かったよね、婚約期間」

「そうはいっても、ふたりはすでに夫婦のように仲が良かったけどね」

「私たちも結婚式に招待してもらえるかな?」

「してもらえるんじゃないの? だって同じ部署だもの」

 朝からその噂で持ち切り。当の本人たちがそれぞれ、外回りと出張で不在だからかもしれない。

 日帰り出張でいない金子さんに頼まれた書類を作成していると、嫌でもジョージさんたちの結婚の話が耳に入ってくる。

 ただの噂だよね? だって金子さんには、大家さんという相手がいるもの。

 それなのにこんなにも心が乱れているのは、噂の情報源が重役に就く秘書だというからだ。

 社内はすっかりお祝いムード。噂にすぎないと言い聞かせても、不安が募る。

 心配して「大丈夫か?」と井手君に声をかけられたときも、「大丈夫だよ」と口では言いながらも、早く帰って大家さんたちに確かめたくてたまらなかった。
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