クールな王子は強引に溺愛する
調理場から階段を上がり、エミリーの部屋へと向かう。メイソンからの指摘を受け、久しぶりに令嬢らしい華やかなドレスに腕を通すため。
モリーは心なしか軽やかに歩く。
「久しぶりにエミリー様を存分に着飾れますわ」
エミリーはモリーに気付かれないように肩を竦めた。
部屋に入るとモリーがドレスから髪飾りまで嬉しそうに選んでエミリーの元へと運ぶ。
タフタ生地のドレスはしっかりした素材でスカートのドレープが立ち上がって美しく見える。
華やかさを喜ぶべきなのに、野山を歩き回っても安心の生地ね。と思ってしまうところが、伯爵令嬢らしくないんだろうなあと、自分でも思う。
ふんわりとした綿菓子のようなモスリン生地のドレスでは、小枝に引っかかってしまうもの。
そんなことを口にすれば「社交界で殿方とダンスでも踊っていてくだされば、ドレスの心配は杞憂にもなりますのに」と、メイソンに言われてしまうだろう。