クールな王子は強引に溺愛する
屋敷の扉は執事によって開けられ、広い応接室に通された。部屋に入るとクリフォード辺境伯夫妻に出迎えられた。夫妻の傍らには娘であるジェシカもいる。
クリフォード卿が和かな笑みを携え、手を差し出した。その手に応えたリアムと固い握手を交わす。
「お待ちしておりましたぞ。リアム様」
「"様"はやめてください。クリフォード卿。今は王子でもなんでもない」
くだけた口調で答えるリアムにクリフォード卿は笑う。
「ハハッ。そうであったな。では、昔のようにリアムと。いや、それともレシアスかな?」
エミリーに視線を移し、クリフォード卿は目を細めて言う。
レシアスを、クリフォード卿はご存じなの?
状況が読めないため、自分の中の疑問は口にはせずに腰を低くして挨拶をする。
「お久しぶりです。クリフォード卿」
「エミリー嬢、しばらく見ない間に美しくなられた。その様子だと、リアムから未だになにも聞いていないのだね」
どう答えていいのかわからず、リアムに視線を向けてもリアムはただ穏やかな顔をしているだけ。そんな二人の様子に、クリフォード卿は挨拶もそこそこに促す。
「ふたりの部屋は用意してある。秘密主義もいいが、これからは何事も胸の内を話した方がいい。夫婦になったのだからね」
クリフォード卿の最後のひとことに、グレイソンが大きく頷いた姿が視界の端に映った。