クールな王子は強引に溺愛する

 クリフォードからエストレリアに行くには森を越えなければならない。馬車で行くにも道が悪く時間がかかる。

 エミリーはぎこちなく鞍を掴み、リアムに背中を預ける形でリアムの黒毛馬に乗馬した。背後から包み込まれる感覚が恥ずかしくて仕方がない。

 グレイソンに『お供いたします』と声をかけられたが、『馬に蹴られたければ来たらいい』と、暗にエミリーとの二人の時間を邪魔するなという態度を見せ、二人だけの出発となった。

「エミリー」

「はっ、はい!」

 背中から直接声が響いて心臓に悪い。声さえも色香を纏っている気がしてしまう。心地いい低音の声も、どこか落ち着けない気持ちになるのは、リアムに心奪われているせいなのだろうか。

「このような辺鄙な場所が最終目的地でがっかりしたか? 王都で王子の妃として、暮らしたいと思わなかったか?」

 いつもの淡々とした声ではあるが、リアムらしくない内容に心がさざめく。

「もしかして、それで私に行き先を教えてくださらなかったのですか? 王子を退くお話を直前まで教えてくださらなかったのも……」
< 137 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop