クールな王子は強引に溺愛する

「どうした」

「いえ、口元」

「ああ」

 乱暴に手で拭き取るリアムに目を丸くして、シルクのハンカチを差し出す。今度はエミリーの行いにリアムが目を丸くした。

「これは淑女らしい。なんというか照れ臭いな」

 照れられるとこちらも恥ずかしくなり、ハンカチを半ば強引にリアムに押し付け、エミリーはプラムを見上げる。

 濃い緑色の葉の間に、赤く完熟している実からまだ黄緑がかったものまで。たくさんの実と生い茂る葉の間から、抜ける真っ青な空が清々しい。

「少し持って行ってもいいでしょうか。野苺と同じようにジャムにできそうですわ」

「ああ、どうせ小鳥が飛んできてつつくか、熟して下に落ちるだけだ。クリフォード卿は狭量ではない。全てジャムにすればいい」

 ジャムにしたいと言うのを見越していたのだろう。黒毛馬にはしっかりと籠が備え付けられているのだから。

 リアムの気遣いに胸が熱くなる。

「とてもいいお土産になります」

「娘の元気な姿以上に、いい土産もないだろう」

 プラムは小さな籠いっぱいにしても、まだまだ実をつけている。大木は奥にも数本あって、どれだけのジャムになるだろうかと思うと期待に胸が弾む。
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