クールな王子は強引に溺愛する
屋敷を出ると、朝よりも高くなった日差しがまぶしい。春の爽やかな気候はそよぐ風も心地いい。
ジョージの農場までの道すがら、出会う人々と晴れやかな顔で挨拶を交わす。
「おやまあ。エミリーお嬢様」
いつもと違う見慣れないドレス姿のエミリーに道行く人は目を丸くして、それから一様に嬉しそうに目を細める。
「ハンナ、もう出歩いていいの?」
ハンナは夫婦でパン屋を営んでいる。数日前に腰を痛め、店が開けられるかどうかと話していた。
エミリーの心配をよそにハンナは朗らかに笑う。
「そう何日も休んでいられませんよ。焼き立てのパン、お屋敷にもお届けしますね」
「まあ、ありがとう。ハンナのところのパン、みんな大好きなのよ」
焼き立ての芳ばしいパンが思い浮かび、顔が綻ぶ。
「ジョージがお嬢様に春野菜を届けるんだって、張り切ってましたよ」
「ふふ。それは楽しみね」