クールな王子は強引に溺愛する
農場に着くと、ジョージの母親であるマーラが顔を上げ、甲高い声を上げた。
「ジョージ! ジョージ! まあ、大変! どちらの貴族のお嬢様がいらしたのかと思いましたわ」
離れた菜花の苗の間から中腰で作業をしていた青年が顔を上げ、呆気に取られたまま固まった。
「ヤダよ。この子ったら、エミリー様がお美しいものだから見惚れちゃってるよ」
ジョージはマーラのからかいの言葉を聞き、我に返ったように言い繕う。
「そんなわけあるか。エミリーのことだから、ひとりで仮装行列の真似事でもしてるかと思っただけだ」
ふいっと横を向いたジョージは、引き結んだ口元を乱暴に腕で擦り、顔を隠してしまった。
「こら。いつまでも子ども気分で、馴れ馴れしく呼んで!」
ひどい剣幕で目を吊り上げるマーラをとりなすように声を掛ける。
「いいのよ。ジョージは小さい頃から兄弟みたいに遊んでたから」
本当は『ハンナ』や『マーラ』も年上なのだから、"さん" 付けしたい。でもそれでは『けじめ』が、『示し』が、と言われるのを寂しく思っていた。
ジョージだけでも子どもの頃と変わらない態度でいるのは嬉しかった。