クールな王子は強引に溺愛する
「キッシンジャー卿は前妻を亡くされて独り身だ。その上潤沢な資金もあり、王国の政策にも口を挟めるほどに力がある。キッシンジャー卿の思惑を退けるためには、エミリー。きみに求婚するほかなかった」
リアムは自分を救ってくれただけ。頭では理解していたのに、言葉で表されると胸が軋む。
「それでも安心できず、全容を話せなかったことを許してほしい。キッシンジャー卿はエミリーを諦めず、さまざまな工作に奔走していた」
ひとけのない庭の奥。『毒』を求めて忍び込んだであろうキッシンジャー卿に、背筋が凍る。それはリアムにも、危害を及ぼし兼ねない事態になるところだったのではないだろうか。
「もう、大丈夫なのでしょうか」
微かに震える声に、リアムは力強く肯く。
「キッシンジャー卿は元々の素行が怪しく、目を付けていた人物だった。いくら代々受け継いできた領地があったとしても、不自然に潤い過ぎている。キッシンジャー卿は私腹を肥やすために、不正を繰り返していた」
『不正』と言われ、なにもやましくはないのに、胸が騒ぐ。
リアムは不正を暴く仕事をしていたのだ。いつの日かの『不正を暴くために結婚した』という噂話が頭を巡る。
リアム自身もエストレリアが『不正を行なっている』と疑っているのだろうか。その点が気になるエミリーは、自分の浅ましさが嫌になる。