クールな王子は強引に溺愛する
ノックの音に体をビクリと跳ねさせると、「お食事の準備が整いました」との声が聞こえ、「ああ。わかった」とリアムが応対した。
夕食を囲むために食堂へ行くと、目を煌めかせたジェシカから熱い抱擁を受ける。ジェシカはクリフォード卿の一人娘だ。
「久しぶりね! 挨拶のときも話したくて仕方なかったんだから。父が言う通り、少し見ない間にエミリーったら、すごく綺麗になったわ!」
「ジェシカだって」
エストレリアの財政が傾く前は、頻繁に互いに屋敷を行き来し顔を合わせた。明るくて人懐っこいジェシカとのお喋りは楽しかった。
「エミリーがリアムと結婚してくれてよかった。そうじゃなかったら、私がこの家に縛り付けられるところだったわ」
「随分な言い方だな。ジェシカ」
片眉を上げるリアムに、ジェシカは笑う。そんなふたりの親しげな話ぶりに、エミリーはといえば声を失い呆然と見つめることしか出来ない。
「リアムこそ物好きね。王子の座も、王都をも捨ててこんな田舎に来るんだもの」
どうして気付かなかったのだろう。
エミリーは田舎育ち。クリフォード辺境伯領の自然豊かな環境はうれしいくらいだ。
しかしリアムは生まれも育ちも王都。喜んでここに住みたかったわけではないのかもしれない。