クールな王子は強引に溺愛する
「寛大なご配慮、感謝いたします。エミリーお嬢様、ちょうどお屋敷に野菜をお届けしようと思ってましたよ。あとで届けさせますね」
「野菜いつもありがとう。マーラたちの作る野菜、大好きよ。楽しみにしているわ」
「お褒めいただき光栄です」
優しい微笑みを向けるマーラに微笑みを返し、農場を訪れた当初の目的を話す。
「今朝、森に行ってみたら野苺が熟していたの。今年もお願いできるかしら」
「それはもちろん! 任せてくださいな」
右腕で力こぶを作るようにして見せ、エミリーとモリーを笑わせた。
ジョージだけがひとり、三人が話す様子をぼんやりと眺めていた。
屋敷に帰れば、マナー教育にダンスのレッスン。令嬢にふさわしい淑女になるための教養を身につける。
あまり乗り気になれないけれど、エストレリア伯領の財政が今以上に厳しくなってしまったら勉強どころではなくなるのだから、今を幸せと思わなければ。
本来、財政を立て直すために潤沢な資金のある伯爵と結婚をするのが、財政を立て直す一番の近道かもしれない。両親や領民を思うのなら、それこそが伯爵令嬢として生まれてきた自分の使命だ。
けれど……。
エミリーはマナー講師のベイリーに気づかれないように小さなため息をついた。
本当にリアム様がさらってくださったらいいのに。
夢見心地な思いを浮かべ、再びため息をついた。