クールな王子は強引に溺愛する

 こちらに顔を向けないエミリーの髪は頭上のシャンデリアの光を受け美しく輝き、白く滑らかな肩にかかる。手を伸ばせば、すぐにでも触れられる。

 腕に手をかけ、こちらに引き寄せ、そのまま自分の思うままに……。そんな衝動に突き動かされそうになる。

 無理矢理だったというのに、馬上で触れた柔らかなエミリーの肌がまざまざと蘇る。

 エミリーがほしい。エミリーの全てが。

 切望する想いはエミリーに届かない。

「でしたら、辺境伯のご令嬢と結婚するのが自然ではありませんか?」

 口にすべきではないとわかっている思いは、耐えきれなくて口からこぼれ落ちた。

 一瞬、時が止まり、それからため息混じりに問い質される。

「なにを言うのだ。エミリーと結婚した俺の行動に、異を唱えるのか」

「いえ。そういうわけでは」

 体裁よくジェシカに自分を押し付けたいとしか思えず、虚しさが込み上げる。

 キッシンジャー卿の脅威もなくなった。憎かった人物も、エミリーを繋ぎ止めておくためには重要だったのかと情けなくなる。

「だいたいその令嬢には、長年想いを寄せている人物がある」

 掠れて消えかけた声を聞き、胸が潰れそうなほどに悲鳴を上げる。

『気持ちが、届かない相手だから、な』

 想い人をそう言い表したときの声と重なって、エミリーは泣きたくなった。

「そう、でしたか」

 それだけ言うと、エミリーは口を閉ざしてしまった。
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