クールな王子は強引に溺愛する
「反逆の疑いというのは? 私たちは王国に忠誠を誓っております」
アンベリール王国に、エストレリア伯領のような小さな領地の伯爵家が反故を考えるなどおこがましい。そもそも心から偉大な王国に敬意を感じるこそあれ、背反など。
父は苦々しく顔を歪め、言葉を絞り出すように言った。
「傾いていた財政をいとも容易く立て直した裏では、不正を行なっているはずだと」
「いとも容易くだなんて!」
「エミリー」
母が優しく窘めるように名前を読んで目を伏せた。思わず声を上げたエミリーは「すみません。取り乱してしまって」と小さく謝る。
「もちろん調べてもらってもやましい行いはしていない。その潔白を晴らすためにもリアム様との結婚は断れないのだよ」
通常であっても立場が下のエストレリア伯爵家が断れる話ではない。その上、今の状態で断れば、それこそ王族と関わりを持つのを嫌がる反逆因子と捉えられない。
しばらくの沈黙の後、エミリーは静かに告げた。
「承知いたしました。リアム様の求婚をお受けいたします」
「そうか。よかった」
安堵した父の声で張り詰めていた空気が幾分緩和された。けれど娘の結婚という華々しい話題とはかけ離れたしめやかな雰囲気のまま、食事は粛々と進められた。