クールな王子は強引に溺愛する

 リアムはグレイソンと並んで歩きながら、いつもの小言を受け流していた。

「ほんの一瞬、お顔を見てくるだけと」

 前クリフォード卿夫妻、それからグレイソンもジェシカとの結婚を控え、食事の席に同席するようになり、賑やかなテーブル。

 その食事を終えるとすぐに領民との会食だと急き立てられたが、どうしてもエミリーの顔が見たいとごねたのだ。会食の後では、エミリーと話せる時間には戻れない。

「一瞬だったではないか」

「それはリアム様の体感でのお話でしょう」

 理論武装をするグレイソンに、こちらも正論をぶつける。

「そろそろ、その呼び名はやめたらどうだ。俺はクリフォード卿として領民と親交を深めるのだぞ」

 領主の変わる挨拶と紹介の会食だ。領民に受け入れられなければ、今後領主として務めていくのは難しい。

 いつまでも『リアム様』と、王子気分が抜けていないと見做されれば、頼りないと判断されるやもしれない。
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