クールな王子は強引に溺愛する
「今さら、どう呼べと仰るのです?」
「昔のように、リアムと呼べばいいだろう? 対外的にだけ『クリフォード卿』と呼べばいい。お前に『旦那様』と呼ばれるのだけは耐え難い。だいたいお前は王都に戻るのだと……」
グレイソンはいいと言うのに、この場に留まりリアムの補佐をすると申し出た。そんなものは、ジェシカの『こんな田舎ではなく、王都で暮らしたい!』という訴えで実現不可能かと思われた。
「わたくしの妻は理解がありますゆえ」
かしこまった言い方にブッと吹き出すと、グレイソンは顔をしかめている。
「俺の妻も理解があるだろう?」
「ええ。それはもちろん。聞き分けがないのは、あなた様でございますから」
「ハハ。違いない」
苦笑しつつも、歯痒い関係は甘んじて受け入れている。
ここまで待ち続けた。あと数日の辛抱くらい造作もないことだ。
そう自分に言い聞かせて。