クールな王子は強引に溺愛する

 穏やかな空気が流れると「そろそろ行かねばな。グレイソンの胃に穴があきそうだ」と笑う。

「通常であれば、さすがのグレイソンでもこのような時間にここまで呼びには来ない。切迫しているのだろうな」

 まるで人ごとのように話してはいるが、思考は仕事に向かっているのだろう。顔つきがスッと変わったのがわかる。

 寂しく思いながらも、仕方ないのだと言い聞かせ、リアムにせめてものお願いを口にする。

「一日が終わる頃には私のもとで気持ちを緩めると、約束していただけませんか?」

「気持ちを、か」

「はい。お仕事に向かわれるときは、厳しいお顔をされておいでです」

 リアムは自分も気づかなかった指摘に感慨深く顎をなでる。

「そうか。そう思うというのは、エミリーの前では緩んだ顔をしている、ということなのだろう?」

「そう、なのでしょうか」

 思いもよらない考え方に、望んでいた関係は既に叶っていた事実を知る。

「きっと俺も気づかぬうちに、エミリーの前では『レシアス』になってしまう。しがらみも立場もなにもかもを忘れ、ひとりの男として、恋い焦がれた相手」

 ひとりの男として。

 一瞬、欲情が灯りかけた瞳を閉じ、エミリーの髪をかき回す。

「覚悟しておくといい。愛し合える時間が持てたときには、嫌というほどわからせる」

 額にキスを落とし、リアムは部屋を出て行った。
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