クールな王子は強引に溺愛する

「リアム様にも針が刺さると危ないですわ」

「針……か。大丈夫なのか? 忌々しい記憶が蘇らないか?」

 ドレスに打たれている針を見つめ、質問をするリアムの方が苦々しく顔を歪めている。

「私はすぐに意識を失いましたから。私よりもリアム様の方が……」

「俺の心配はいい。相変わらずだな。エミリーは。子どもの頃も自分が蜂に刺されたくせに、俺の心配ばかりしていた」

 リアムの指先が胸元のドレスの生地と肌の境界線に触れ、体を揺らしそうになる。

「ダメ、ですわ。本当に」

「すぐだ。じっとしていろ」

 体を屈めたリアムは上目遣いで念を押す。深い碧眼の眼差しには情欲が露わになり、吸い込まれ堕ちていきそうになる。

 鼻先が肌に触れ、軽く閉じられたまつ毛までもが肌をくすぐる。柔らかな唇が触れた後、背筋を這い上がる刺激を与えられ、吐息を漏らす。

「限られた時間が口惜しいな」

 触れるだけのキスをして離れていくリアムは、そう言い残して部屋を出て行った。

 仕立て屋が戻ると、早急にドレスは着替えさせられた。胸に残された赤い印は艶かしく、白い肌に映える。それを誰も口に出し指摘はしないことが、余計にエミリーは恥ずかしかった。

 ドレスは清楚な控えめなデザインに変更され、いくつか決定したようだった。
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