クールな王子は強引に溺愛する

「兄上、俺には謝罪も気遣いもなかったぞ。急の呼び出しにどれほど奔走したか」

 バージルに苦情を訴えられる辺りが兄弟であり、そして仲の良さも窺える。バージルも若干意地悪な表情を浮かべ、からかうように言う。

「結婚もいいかもなと思わせたお前が悪い」

 リアム様のお姿を見て、結婚を決められたというの?

 驚いているエミリーが目を白黒させているうちに「では、明日は存分に楽しんでくれ」と、バージルは立ち去っていく。

 その様子にリアムは「だ、そうだ。あくまで主役は向こうだ。俺たちは楽しもう」と穏やかな顔をする。

「さあ、こちらへ」

 兄バージルを見送り、深紅の重厚な絨毯を進む。ここに暮らし慣れ親しんでいた雰囲気が、気遅れしてしまうエミリーには心強い。

 陛下への拝謁を済ませ、前回用意された部屋と同じ場所に案内される。

 王都から離れ1ヶ月も経たないが、とてつもない時が過ぎた気がする。それはその間にさまざまな出来事があったから。正確に言えば前回王都に出向いてからずっと、変化し通しだった。
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