クールな王子は強引に溺愛する
そんな経緯など露知らず、エミリーは不安げな顔をして言葉を重ねる。
「リアム様に私を選んで失敗だったと、思われたら……」
あまりに後ろ向きな発言に、わざと試すような質問を向ける。
「もしそうだとしたら、俺から離れるのか?」
息を飲んだエミリーが悲しそうに眉を寄せ、「今からでも修道女に」と本気で行動に移しそうな熱量で話す。
どうしたらこの狂おしいほどにエミリーを求めている気持ちが通じるのかと、もどかしく思っていると、突如として歓声が沸き起こった。
バルコニーへと続く扉が開け放たれたのだ。外からは凄まじいほどの声が聞こえる。
王国内に広く伝達されていたのか、第一王子バージルの成婚を祝おうと多くの人が集まっているようだ。
国民へ挨拶をするために進み出ようとしたバージルが、近くにいた護衛になにかを耳打ちしている。そして、リアムに視線を送ってから、バルコニーの方へと歩み出した。
歓声が一層大きくなる中、バージルに話しかけられていた護衛がリアムの元に馳せ参じる。バージルからの伝言を受け取り、リアムは苦笑した。