クールな王子は強引に溺愛する
「リアム様?」
不安げに瞳を揺らすエミリーの澄んだエメラルドグリーンの瞳を見つめる。
外では「第一王子バージル様! 万歳ー! 第一王子妃 フレイア様! 万歳ー!」と、異様な盛り上がりをみせている。
「兄上が『お前もバルコニーに顔を出せ』と」
煩わしそうに言いつつも、エミリーの腰を抱き寄せ、歩みを進める。
「あの、リアム様?」
エミリーの声は歓声にかき消され、リアムに届かない。
リアムがバルコニーに出ると、歓声の内容が変わる。
「第二王子リアム様! リアム王子!」
リアムは精悍な顔つきで国民に手を上げる。
「第二王子リアム様! 第二王子妃エミリー様! 万歳ー!」
エミリーは自分の名前が呼ばれ、ドキリとする。『第二王子妃エミリー様!』の声を聞き、リアムはエミリーの頬に唇を寄せた。
「ワアー!」と一段と歓声が大きくなり、大地が揺れているような錯覚を覚える。
頬に唇を寄せたまま、リアムはぼやくように言う。
「どいつもこいつも。俺はもはや第二王子ではないのだがな」
迷惑そうな、それでいて、どこか嬉しそうなリアムにエミリーは頬を緩めた。