クールな王子は強引に溺愛する

 興奮冷めやらぬ歓声から離れ、控室にリアムと身を寄せる。客人は皆、晩餐会の会場に既に向かっているのか、ここにはリアムとエミリーだけだ。

「兄上には今回呼び戻された際に『俺が第一王子である以上、お前は王子の座を退こうとも第二王子だ』と言われた」

 バージルの言い分はなんとなく理解できて、エミリーは微笑んで応える。

「無理に第二王子をおやめにならなくても」

「まあ、な。それに国民に第二王子妃はエミリーだと認められていた。知れ渡っていたとはな」

 柔らかな笑みを向け、エミリーの頬を撫でる。

「国民に認められても尚、俺から離れたいと?」

「離れたいわけでは……」

 口籠るエミリーの両手を包み込むように握る。

「これから毎日、どれほど俺が想っているのかを身をもって知らしめる」

 包み込んだ手を掴み、指先に口付ける。その姿から目が離せずにいると、欲情の色が映し出された眼差しと目が合う。
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