クールな王子は強引に溺愛する

 晩餐会は軽い立食の部屋とダンスホールを行き来できるものだった。リアムに導かれるまま目まぐるしくさまざまな人に挨拶をしたが、どれも好意的な対応だった。

 そして幼い頃に約束したダンスを共に踊る。かれこれ随分側にいるはずなのに、対外的な顔をするリアムにエミリー自身、夢見心地で見惚れる。

 曲調が変わり、体を預けゆったりと踊るステップもどこか艶っぽい。

「そんなに情熱的に見つめるな。皆の前で自制心が崩壊したらどうするのだ」

 距離が近いのをいいことに、リアムはエミリーにだけ聞こえるように本音をこぼす。

「リアム様が凛々しくあらせられて」

「凛々しい俺は嫌ではなかったのか」

「そうではありませんわ。ただ、柔らかな表情を私だけに見せてほしいと」

 大胆に腰を引き寄せられ、ドキリとする。

「安心しろ。乱れた顔もエミリーにしか見せぬ」

 思わぬ断言に頬を染める。切ない顔も、悩ましげな表情も。全て鮮明に蘇りそうになり、慌てて頭の中から追い出し、涼しげな顔をしているリアムへと思考を戻す。
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