クールな王子は強引に溺愛する
リアムは曲に合わせダンスフロアの端に進み、部屋から抜け出した。立食の方へ行くのかと思われたが、その方向ともどうやら違う。
迷わずに進み、回廊に辿り着いたところで部屋へと向かっている事実に気付く。王都を見渡せる眺めのいい場所から、外も祭りのように賑やかだと知る。
「第一王子の成婚の報告に皆浮かれているな。正確には婚約の報告なのだが、実際に結婚した際にはどうなるか」
「楽しそうですわ。行ってみたい」
エストレリアでも祭りはある。けれど人の規模もなにもかもが違う。
「ああ、また今度行けばいい」
後ろから抱きしめられ、幸せを噛みしめる。賑やかな余韻から逃れるように部屋へと向かう。
晩餐会から抜け出していいのか。そんな野暮な質問はできなかった。ひと通りの挨拶は済ませた。そもそも主役はバージルだ。きっとリアムたちの姿が見えずとも、気に留める人物はいない。