クールな王子は強引に溺愛する
気を失ってしまったらしい。記憶を手繰り寄せ、辺りを見回す。すると真っ直ぐに見つめているリアムと目が合った。
「エミリー。俺に隠していることがあるね?」
「えっ」
突然の追及に言葉が出てこない。
隠して、いること?
今の今まで体の隅々まで愛され、暴かれた。ほかになにを隠せと。
「俺が不正を正す仕事を任されていたと、知っていただろうに」
悔しさを滲ませるリアムの表情を視界に映し、息を飲む。
「私は、なにも」
「では、この使途不明金はなんだ」
エストレリア伯領の帳簿の写しを出され、問い質される。そこには確かに計上されてはいるが、用途不明な金額が記されている。
「それは……」
「野苺のジャムを名産にするだけでは飽き足らず、苗株を領地の農場近くに植え直した」
「そこまで、知って……」
森の奥深く。野苺の自生する場所は、エストレリア伯領の領地内ではあるものの、皆が暮らす場所からは遠い。そのため、収穫が容易になればと農場で育て始めている。
しかしそれについての金銭は発生していない。