クールな王子は強引に溺愛する
「馬鹿な真似をと、お思いなのでしょう? それでも不正はしていませんわ。無駄な投資をして、ただでさえ困窮していた財政を圧迫させていたかもしれませんけれど」
「ああ。わかっている。悪いが全て調べた上で聞いている。なぜ疑われ兼ねない帳簿の付け方をした。これがキッシンジャー卿だったらどうした。付け込まれ、再び窮地に追い込まれたかもしれない」
恐ろしい顔が脳裏に過り、背筋が凍る。
「悪いことは、なにも……」
「論点はそこじゃない」
前キッシンジャー卿の思惑で不正をしていると汚名を着せられ、傾いていくエストレリア伯領。エストレリア卿の人となりも知っていたからこそ、信じてはいた。
しかし念のため調べ、出てきた使途不明金。一部をエミリーに任せてはいたらしいが、エストレリア卿も知らない金の動きがあっていいわけがない。
「ただの噂だと思っていましたが、不正を暴くために私を妻にしたのですか?」
思いもよらない指摘にリアムは頭を振る。
「なにを馬鹿な」
「万が一でも不正をしていたらと、考えなかったわけではありませんよね?」
揺れる瞳には涙が溜まり、今にもこぼれてしまいそうだ。
否定をしないリアムに、エミリーは確信を得る。
万が一でもエミリーが不正をしていたら。