クールな王子は強引に溺愛する

「もしもエミリーが嘘をつき、俺を欺いていたとしたら」

 低い声は平坦で淡々としている。それが必要以上にエミリーの胸を苦しくさせる。

 嘘はついていないし、不正もしていない。
 それでも濡れ衣を着せられる恐れはあった。

 どことなく宣告を聞く気持ちになり、目を閉じた。

「万が一、不正をしていたとしたら、罪を償えばいい。愛しているのだ。エミリーを手離すつもりはないと言っただろう? その結果、王子の座や、爵位を剥奪されるのなら、致し方ない」

 息を飲み、堪えきれず涙を流すエミリーを再び抱きしめる。

「そこまでしていただいて、私になんの価値が」

 嗚咽を漏らすエミリーの頭を優しく撫でる。

「こういう跳ねっ返りの娘は、探してもなかなかいない」

 本音を言ったのだが、返事はない。

「その上、我が妻は美しい。こんな女性は唯一無二だろう?」

「美しい姫君はいくらでもいらっしゃいますわ」

 どれだけ言い連ねても、納得しないらしい。

「俺はエミリーがいいと言っているであろう?」

 片眉を上げ、責めるように告げてもエミリーは「はい」とは言わない。
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