クールな王子は強引に溺愛する
「仮にも貴方様はアンベリール王国の第二王子っ!」
煩わしいと言わんばかりに手を上げ、青年の言葉を遮ると、リアムはエミリーに向き合った。
「エミリー。俺はこのグレイソンと所用を済ませながら王都を目指す。宿で落ち合おう。慣れない馬車旅は疲れる。ゆっくり来てくれればいい」
「はい。かしこまりました」
スカートの端を持ち上げ、頭を下げるとリアムは軽く頷いた。
「親子水入らずの挨拶もあるだろう。我々は先に出発させてもらおう」
気遣いに胸がじんわりと温かくなり、背を向けたリアムを見つめる。リアムは黒毛馬に真っ直ぐ歩み寄り、愛馬の頭を数度撫でると手綱を掴んだ。
片掛けのペリースと呼ばれるマントをはためかせ騎乗する姿は、優美でありつつも威厳があり、リアムは遠い存在なのだと再認識させる。
このような方と結婚……。
一瞬だけ現実味を帯びそうだった結婚も、リアムと距離が離れた分だけ夢に逆戻りするような心持ちになった。