クールな王子は強引に溺愛する
ただ……。
『リアム様のお部屋はこちらでごさいます。エミリー様は……』
そう言って案内してくれようとした家主の言葉を遮り、『エミリーとは結婚する身。同じ部屋で構わない』と告げたリアムの真意を図りかねずに、部屋の隅で立ち尽くしたまま。
「なにをしている。そこにいては休めないだろう」
元々リアムに用意されていた部屋は豪華で広々としている。その上、続き間になっている部屋があるようで、もうひとつの部屋の方でリアムは軍服を脱ぎ、ゆったりとしたシャツとズボンに履き替えたようだった。
どこかリラックスした雰囲気のリアムを視界に収め、エミリーは余計に心の所在があやふやになる。
「侍女を呼んで着替えを」
リアムに促されても、頷いていいのかさえわからない。
結婚はする。その覚悟はしていたつもりだ。けれどまだ夫婦になってはいない。その二人が寝所を共にするとは思ってもみなかった。
「あ、の。私、リアム様と同じお部屋では恐れ多くて。小さな部屋で構いません。用意していただいていた別の部屋で」
リアムをまともに見て話し出せずに、床の敷物の模様を見つめて話す。要望を口に出すと、リアムが近寄ってくる気配を感じた。