クールな王子は強引に溺愛する
城内をしばらく歩いていると、大勢の人だかりと遭遇した。そのほとんどが色とりどりのドレスを見に纏った女性で、同じ女性であるエミリーさえも見惚れてしまいそうなほど美しい。
女性を先導しているのは男性で、その男性がエミリーに気付いて足を止めた。
男性はエミリーの父くらいの年齢に見える。城で舞踊会でもあるのだろうか。それにしても先導する男性以外は見事に女性ばかりだ。
「もしや、貴方様は噂に聞くエストレリア伯領のご令嬢ではありませんか?」
体を上から下まで舐めるように観察され、エミリーは身震いをする。とてもお近づきにはなれそうにないと思っているのに、相手はまだ話があるのか立ち去ろうとはしない。
それどころか男性が口にした『エストレリア伯領』という名称に周りにいた女性がヒソヒソと話し始めた。
その声はわざと聞かせたいのか、互いに耳打ちし合うには到底大きな声だった。
「あの、不正を行なっているという噂の?」
「仕方ないわ。とても貧しいそうですもの」
「本当。なに、あの見すぼらしいドレス」
口々に話す言葉はどれもエミリーを貶すものばかり。それを宥めるように男性は声を上げる。