クールな王子は強引に溺愛する
「まあまあ。お嬢様方。彼女はわたくしが救って差し上げるので、ご安心ください」
どういうことだろうと、眉を潜めていると男性はエミリーに近寄ってくる。
「わたくしはキッシンジャー伯爵と申します。エストレリア伯爵にエミリー嬢への結婚を申し入れたのですよ。お聞きしていませんか?」
口元を卑しく歪め笑うキッシンジャー卿から、距離を取るように後退る。
確かに父はリアムとの婚約話をする際、『エミリーにいくつか縁談が申し込まれた』と言っていた。その中にキッシンジャー卿からの話も含まれていたのだろうか。
私へ結婚の申し込み? 父と変わらない歳に見えるのに、こんな人と結婚だなんて。
エミリーが怯えた目を向けていても、キッシンジャー卿はゆっくりと距離を詰めるようにエミリーの方へ歩みを進める。
「我が領地は潤沢な資金があります。エストレリア伯領ほどの小さな領地ひとつ救うくらい、造作もない。そして、逆も然り」
エストレリア伯領を潰すのは、造作もないと言いたいの?
怪しく細められる瞳に、背筋がぞくりと冷たくなる。
「エストレリア伯爵は能がない。だから傾くのですよ。わたくしに任せれば……」
「父を、エストレリア伯爵を侮辱しないでいただきたい。父は!」