クールな王子は強引に溺愛する

 エミリーは力なく首を横に振る。

「誤解しないで。優しくしてくださったわ。それにリアム様は私を守ってくださった」

 確かに強引だった。逃げられない力で押さえつけられていた。けれど、それに反して触れ方は優しかった。もっと酷く出来たはずだ。時間をかけ、エミリーを解し、気遣っていた心遣いを感じた。

 キッシンジャー卿の魔の手から守るためだと、どこかで気がついた。リアムがエミリーの体に押し入ったときに「これで誰もエミリーを奪えない」と呟いた声を聞いたせいかもしれない。

「それならどうして泣いていらっしゃるのですか?」

 守ってくださった。ただ、その事実があるだけ。最初からわかっていた。リアムは窮地に陥りそうな自分を助けるために、求婚したのだ。

 そして守るためにエミリーを抱いた。そうしなれば、キッシンジャー卿に狙われるから。そこにリアムの愛はない。

 キッシンジャー卿の言いたかった真意が今ならわかる。エミリーの純潔を奪い、リアムと結婚できる資格を剥奪しようとしたのだ。

 リアムに無理矢理にでも抱かれたからこそ、未だリアムの妻としてこの場にいられるのだ。それは全て慈悲深いリアムのお陰。

 そうか。私はリアム様の気持ちがないから悲しいのだわ。私は憧れでも、懐かしい想いからでもなく、リアム様を……。

 自分の気持ちに改めて気がついても、寂しさは募るばかり。

「エミリー様?」

 モリーの困惑した声を、ただただ泣きながら聞いた。
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