ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

女生徒の中にはアルベルトに恋をしてしまい、花嫁候補たちに対して嫉妬の目を向けるほど熱狂的な者もいるが、ほとんどはアルベルトに対して親しみを感じている。

今日は彼にとって自分の伴侶を決める幸せな日。

みんなそう考えているため、彼の登場に祝福の温かな拍手が沸き起こっていたのだが、冴えない表情に気付いて徐々に拍手の音がまばらになっていった。

生徒たちは動揺しているようだが、ロザンナにとっては毎度のこと。過去八回全て、仏頂面での登場だ。

アルベルトの心のうちは知らない。けれどおそらく、これから囁く愛の言葉を頭の中で唱えているうちに緊張で表情が保てなくなった、まぁそんなところだろう。

彼はこれからマリンの前に立って愛を約束するのだが、その最初のひと言を発するまでに、少しばかり間が空くのだ。

いつもは何事もスマートにしれっとした顔でやってのけるアルベルトだが、公開求婚はさすがに緊張するらしい。

ロザンナは肩を竦めた後、近づいてきたアルベルトへと礼を尽くすようにお辞儀をした。

床へと視線を留めたまま、彼が通り過ぎるのを待つ。ロザンナの視界にアルベルトの真新しい靴が映り込み、……ピタリと停止した。

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