ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています

なぜ立ち止まったのかとゆっくり視線をあげる。すると、ロザンナの目が捕らえたのは、自分をじっと見つめるアルベルトの顔だった。

いつもなら彼はここで足を止めることなく、通り過ぎていく。

これまで一度も私の目の前で立ち止まったことなどなかったのにと、ロザンナがダークブラウンの瞳を不思議に見つめ返していると、すぐそばで「きゃっ」と黄色い声が上がった。

取り巻きの女子たちから期待に満ちた眼差しを受け、ロザンナはまさかと息をのむ。

選ばれたことがなかったため考えもしなかったが、これはもしかしたら自分が選ばれる流れなのではと、変な緊張感に襲われる。

目線がアルベルトの右手へと落ちていく。本当にそうなら、その手がロザンナへと向けられる。

じっと見つめる先で指先がぴくりと動いた。どきりと鼓動が高鳴るも、……それだけだった。アルベルトはロザンナの前からゆっくりと離れていった。


「今の紛らわしい行動は、何?」


ロザンナはボソッと呟きながらまるで呪いでもかけるかのように、離れてくアルベルトの背中へと険悪な眼差しを向ける。

彼が再び足を止めたのは、もちろんマリンの前だった。すっと右手を差し出し、その場で片膝をつく。

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