ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
彼女たちにとって、選ばれなかったロザンナに用はない。逆にロザンナと共にいることでマリンの機嫌を損ねてしまっては大変だと、そそくさ離れていくのも仕方なのないことだ。
「残念だったね。私はロザンナだと思ってたのにな」
ひとりロザンナの元を離れていかなかったルイーズが、小声で話しかけてくる。誰かに媚びる性格ではないため、それは本心だろう。
ロザンナも周りに同調してふたりへ拍手を送りながら、囁き返す。
「ずっと言ってたでしょ。アルベルト様が選ぶのはマリンさんで、私じゃないって」
納得いかない様子のルイーズに苦笑いを浮かべてから、ロザンナは「さてと」と心の中で呟き、気持ちを切り替える。
ロザンナにとって、花嫁に選ばれないのは当然でいわばどうでもいいこと。ここからが重要なのだ。
これまで繰り返した八回の人生。例外は二回ほどあるが、その多くの最期……死は、アルベルトが花嫁を選んだその日に、遅くとも一ヶ月以内にやってくる。
九回目の人生を全うできるか。それは、今日から一ヶ月を無事に乗り切れるかどうかにかかっているのだ。
これまでの死因は様々。
しかし自ら命を絶ったのは、アルベルトに選ばれず絶望した最初の人生のみ。