ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
近くに残っていた聖魔法師に、まだ魔法院のどこかにいるゴルドンへと「先に帰ります」と伝言を頼み、ロザンナは兄と並んで裏口から外に出た。
兄の剣の鞘に付いているクリスタルチャームを目にし、いつかの怪我を負った騎士団員を思い出す。
ふとした瞬間、彼は元気でやっているだろうかと気にはなるものの、ゴルドンに忘れるよう言われたため思いを言葉にするのは憚られる。
馬で送っていくと兄に言われ、魔法院から騎士団の厩舎への薄暗くなった道を進もうとした時、「おや?」と声がかけられた。
兄妹揃って振り返り、顔を強張らせる。そこにいたのはマリンの父、アーヴィング伯爵。
歩み寄ってくる伯爵に対し、ダンは騎士団の礼に則って胸元に拳を当てて僅かに頭を下げ、ロザンナはスカートを軽く摘んで膝を折りお辞儀をする。
「これはこれは宰相自慢のご子息にご令嬢。先ほど小耳に挟みましたが、第二騎士団で問題が起きたらしいですね。……まったく、アルベルト様がなめられているとしか思えませんな」
最後はぼそぼそと呟かれたが、兄妹の耳にはしっかりと届いていた。俯き加減で納得のいかない顔をしたダンを横目で見て、ロザンナも表情を暗くする。