ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
一歩一歩足を進ませながら、ロザンナはアルベルトの横顔を、その目元をじっと見つめる。
他者を萎縮させる冷酷な眼差しは、あの時の彼と似ている。瞳の奥と髪にもちらちらと赤が混ざっていて余計にそう思わせる。
肩の力を抜き、木刀を横に振るいつつ後退すると、徐々にアルベルトから赤が消えていった。
「授業はここまでだ!」と教師が捨て台詞を吐き、足をもたつかせて校舎へ向かっていく。
わっと生徒たちに囲まれたアルベルトを見てロザンナも彼の元へ行こうとしたが、「アルベルト様!」と響いた声が邪魔をした。
アルベルトに駆け寄ったのはマリンだ。「とても素敵でした」と頬を赤く染める彼女へ、アルベルトが「ありがとう」と微笑みかける。
視線を通わせる様子にロザンナの胸がちくりと痛み、完全に足が止まる。
彼の気持ちはどうなっているのかという心配は杞憂に終わりそうだ。
アルベルトは休暇中にマリンに会いに行っていた。他の誰にも、同じ学内にいたはずのロザンナの元にも彼は会いに来ていないのにだ。
やっとマリンの良さに気づいて、彼女に気持ちが傾いたのかもしれない。
いつも通りの流れを取り戻し、これでロザンナも聖魔法師への夢に向かってひたすら突き進んでいける。