ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
アルベルトがそんなことをするはずがないと笑い飛ばしたいのに、冷酷な彼の表情を目にしてしまっているため冗談で片付けられない。
実はもうとっくにアルベルトの心はマリンのもので、彼が自分に構うのは勘付かれた時に迅速に対処できるようにと考えてのことではとまで、ロザンナは想像を膨らませる。
木刀を突き付けられていた教師の姿が半年後の自分の姿かもしれないと背筋を震わせた時、コンコンと戸が叩かれた。
テーブルの上に置いたディックを嬉しそうに眺めていたトゥーリがすかさずそれに反応し、扉へと向かっていく。
戸口で何かボソボソとやり取りをした後、彼女はロザンナの元に舞い戻り、さきほどよりも何倍も顔を輝かせた。
「アルベルト様から昼食のお誘いです」
「ひっ!」
嬉々とした報告に、ロザンナは小さく悲鳴をあげ体を強張らせる。そしてゴホゴホと突然咳をし始める。
「私、少し体調が悪いの。風邪気味かも。アルベルト様に移すわけにはいかないので今日は、……いえ、しばらく遠慮させていただきたいわ」
「ロ、ロザンナ様?」
トゥーリから怪訝な顔をされ、ロザンナは慌ててベッドへ潜り込む。