ループ10回目の公爵令嬢は王太子に溺愛されています
そしてロザンナの手を乱暴に振り払い、足取り荒く部屋を出ていく。
残されたロザンナは崩れ落ちるようにソファーに腰をおろし、高ぶる鼓動を宥めるように胸元をさする。
目撃者がたくさんいたため、エストリーナ夫妻が誰かに襲われたのは周知の事実である。
同時にその場で、ゴルドンの見立てにより両親共にそれほど傷は深くなかったとされた。
そのため、致命傷だったのを知っているのは傷を負った本人たちに、ロザンナとゴルドンだ。
後にスコット自ら、国王とアルベルトに包み隠さず話したため漏れ聞いた可能性もあるが、さっきのマリンの言い方は、まるで襲撃にあった当夜に致命傷だと知っていたようだった。
どうして知っているのか考えを巡らせるうちに、もうひとりいることに気がついてロザンナの手が震える。
襲った本人だ。聖魔法での治療も困難なほど深い傷を与えたはずなのに、すぐにスコットが元気な姿で目の前に現れたら、……さぞ唖然とすることだろう。
ロザンナもゴルドンもしばらくの安静を要求していたのが、スコットはそれを押し切り、毅然とした態度で職務に復帰した。
思い返せばその姿は、誰にも付けいる隙を与えたくないかのようだった。